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(4)DGPS測位装置
光ファイバケーブル、送受波器および流向流速計の設置位置の測位にDGPSを用いた。
後述する現場観測の観測水域?では、電話回線によるDGPS補正情報サービス(日本船舶通信(株))を基地局情報として使用し、リアルタイムのDGPS測位を行った。移動局はGPS受信機(SCA−12S、アシュテック社)、通信ユニットおよび携帯電話から構成される。また観測水域?では、湖心観測所に基地局を設置し、補正情報の送信に特定小電力無線を使用したリアルタイムDGPSおよび後処理で測位データを得るオフラインDGPSを併用した。受信機はガーミン杜GPS100SRVY?を使用した。
4.現場観測
1995年3月25日から5月19日まで56日間にわたり中海の大根島湖岸付近(観測水域?)で、次いで1995年7月29日から11月18日まで13日間にわたり中海の湖心(観測水域?)で上記の動態観測システムを用い現場観測を行った4)。さらに1996年8月26日からは中海の湖心から北東方向1600m先の範囲の水域(観測水域?)で観測を行っている(Fig.5)。
(1)中海大根島湖岸付近(観測水域?)での観測
Fig.6に示すように、大根島入江港の沖合約200m先に音響送受波器3台(T−1,2,3)および光ファイバケーブルを設置した。光ファイバは短冊状に南北4本の測線を設定した。光ファイバの湖底部分の全長は約1200mであった。その他、オフラインの小型サーミスタ水温計および流向流速計を湖底に設置した。音響および光ファイバの観測装置本体は電源設備のある観測小屋に設置し、連続観測を行った。
光ファイバの敷設および送受波器の設置位置の測位は、GPS単独測位および六分儀による三角測量で行った。
送受波器の設置した地点は水深3.5m程度で、通常、水面から湖底まで淡水に近い低塩分層が卓越しており、塩分躍層は存在しない。
Fig.7に観測開始より1週間の音響プロファイルを示す。2分母に送受波を行い、記録・表示したものである。下部の太い帯は、発信線であり、上部の帯は水面での反射を示す。湖底で送受信を行うので、通常の測深記録等とは異なる記録となっている。深度のスケールは、湖底を0mとして表示した。この記録には塩分躍層は現れていない。水面の反射面の変動は水位を反映しており、潮汐、風、気圧等で変化する。観測データの中で、典型的な塩分躍層の現れたプロファイルをFig.8に示す。記録の左半分に見える雑音は波浪によるものである。記録の中央部分の水中には塩分躍層を形成する反射面が現れている。これは1995年5月11日8時頃から送受波器下-3付近に塩水が到来し12時〜14時には水面下約50cmまで塩分躍層が上昇したことを示している。同時に観測を行っている流向流速計内蔵の塩分計でも塩分の上昇が測定された。
Fig.9(1)、(2)、(3)に5月11日の光ファイバの側線に沿った湖底水温分布観測装置による水温分布の例を示す。温度の低い塩水塊が観測水域に到来していることによる水温の低下が観測されている。観測域の南方から水温が低下していくことから、塩水塊が湖岸に向かって北上していることがわかる。このデータから塩水塊の先端の位置、移動速度が求められる。

152-1.gif

Fig.5 Location of observation area ?, ? and ? in Lake Nakaumi, western part of Honsyu, Japan.

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Fig.6

Position of an optical fiber cable and acoustic transducers (T-1,2,3) at the margin of Nakaumi (observation area?).

 

 

 

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